移りゆく時の中をひょうひょうと生きていく。新井秀昇 (ユーフォニアム)「くもり時々雨のち晴れ」CDレビュー





 

ユーフォニアム奏者の新井秀昇さんから2019年発売のCD「くもり時々雨のち晴れ」が届きましたので、簡単にレビューしてみようと思います。


2020年1月現在、洗足学園音楽大学非常勤講師も務めるユーフォニアム奏者、新井秀昇氏が2019年に発表したセカンド・アルバム。

ファースト・アルバムの「NASOTA」同様に自作曲の「ユーフォニアムとピアノのためのソナタ第2番」が1曲目に収録されています。これがまたかっこいいのなんの、天才か!ユーフォニアム奏者としても前作より格段にレベルアップしています。軽妙な語り口はそのままに、サウンドがさらに洗練されて、表現の幅もさらに広がり、「この人はどこまで進化するんだろう」と、早くもサード・アルバムを楽しみにしてしまいます。

今回も自作品が4曲(前作より1作品増えた)。その他は、前作はバッハやシューマンなどでしたが、今回はジル・マルタン、メンデルスゾーン/シュテックメスト、グリンカ、ジャン・バックとなっています。

ファースト・アルバムはエネルギーとパッションがむき出しになっていて、それが魅力でもあったのですが、このセカンド・アルバムではそれを少し内に秘めて(とはいえパッションだだ漏れですが)、選曲も含めて全体的にスタイリッシュに仕上げています。

その分、語り口はより優しくまろやかで、タイトルにもあるような日常の変化を受け入れながら、その変化を楽しみ、その変化に対応する、移りゆく時の中をひょうひょうと生きていくような「声が良すぎるカッコイイおじさん」のようなアルバムになっています。ジェントル&ダンディ。

前作同様、新井氏自身がプロデューサーを務めていますが、特にCDとしてのサウンド面ではかなり洗練されたのではないかと思います。

ピアノは前作と同じく清水初海さん。良いコンビです。

ユーフォニアムのCDは世界中で「すげえな!」というCDがドンドン出てくるので面白いですが、この「くもり時々雨のち晴れ」もユーフォニアム愛好家は迷わず「買い」です。今回も盤面デザインがジャケットのアートワークと連動していて素敵。まだ持っていない方はファーストの「NASOTA」と2枚あわせて買うのもオススメです。

レビュー:梅本周平(Wind Band Press)


新井秀昇/ユーフォニアム
Hidenori Arai // Euphonium

埼玉県出身。洗足学園音楽大学を最優秀賞を受賞し卒業。同大学卒業演奏会、並びにその選抜者によるデビューコンサート、読売新人演奏会、同演奏会における選抜者によるJMCコンサート(日本経営クラブ主催)等に出演。第5回Jeju国際金管コンペティション(韓国開催)第3位(第4回ファイナリスト)、第26回日本管打楽器コンクール第3位、第7回津堅コンクール第1位をはじめとする国内外のコンクールにて入賞。これまでにユーフォニアムを露木薫、舟越道郎、大塚哲也の各氏に、即興演奏を平野公崇氏に師事。現在、吹奏楽やオーケストラにおけるエキストラプレーヤー、様々なアンサンブルにおける活動、ソロ活動など、多岐にわたって演奏活動を繰り広げる。各アカデミー、講習会、ミュージックキャンプ等でも講師を務め、近年では2016年に韓国にて開催されたアジア・テューバ・フェスティヴァルに講師として招聘される。また、創作にも取り組み、特にその性質をよく知るユーフォニアムやテューバを使った作曲/編曲作品を多く手掛けている。2012年度には日本ユーフォニアム・テューバ協会からの委嘱により、第2回J.E.T.A.学生コンクール/テューバ部門課題曲「テューバとピアノのためのソナタ ?プロローグ付き?」を作曲する。主宰プロジェクト公演もしばしば開催しており、これまでに3回の『新井秀昇 ユーフォニアムリサイタル』を開催する他、全曲自身の作曲作品から構成されるコンサート『Hide’s Music Salon』、ジャズを中心にお届けする『新井秀昇カルテット Live』等を手掛けている。
洗足学園音楽大学非常勤講師、日本ユーフォニアム・テューバ協会常任理事。


商品詳細は以下の通り。

■演奏者 (Player):ユーフォニアム:新井秀昇(Hidenori Arai, Euphonium)
ピアノ:清水初海(Hatsumi Shimizu, Piano)

■レーベル (Label):合同会社opus55 (opus55 LLC)

■発売年 (Release year):2019

■収録曲 (Song List):

ユーフォニアムとピアノのためのソナタ第2番:新井秀昇
Sonata for Euphonium and Piano No.2 : Hidenori Arai
1. Tempo di Valse, appassionato – Latin [5:06]
2. Tempo rubato – Beguine [3:43]
3. Rondo alla Zingarese [3:10]

ミニャルディーズ:ジル・マルタン
Mignardises : Gilles Martin
4. Giocoso [1:04]
5. Cantabile [1:55]

6. 「歌の翼に」による幻想曲:フェリックス・メンデルスゾーン、H.シュテックメスト [4:05]
Fantasie “Auf Flugeln des Gesags” : Felix Mendelssohn / Henri Steckmest

7. ソナタ第1楽章:ミハイル・グリンカ(編曲:ライナー・ショットシュテット) [9:52]
Sonatensatz:Michail Glinka (arr. Rainer Schottstadt)

あの日の印象:新井秀昇
Impression in Those Days : Hidenori Arai
8. きらきら  Kira Kira [1:15]
9. へんてこ  Henteco [1:31]
10. ぽかぽか  Poco a Poco a… [2:46]

11. コンサート・ヴァリエーションズ:ジャン・バック [16:03]
Concert Variations : Jan Bach

12. 祈り:新井秀昇 [4:05]
Inori : Hidenori Arai

13. くもり時々雨のち晴れ:新井秀昇 [6:11]
Changing Weather : Hidenori Arai

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